「おお、やはりあの犬たちは “山の神様のお使い” に違いない。 本当にありがとうございました。」 尊は、神様に対し、心から御礼を申し上げました。
頂上へ着くと、いつのまにか 犬の姿はどこにも見えません。 影のように現れた犬たちは、影のように消えていました。
さあどうぞ、頂上へご案内いたしましょうというように。
すっかり火が消えました。 犬たちの見事な働きに 尊も兵も我を忘れて感嘆していますと、 犬たちは二頭、三頭、また五頭と尊の前に集まって、 静かに歩き始めました。
その時、突然現れたたくさんの白い影、黒い影。 影は風を切って、次々に猛火の中に飛び込んで行きます。 影のように見えたのは、大きな白犬、黒犬です。 犬たちは、荒れ狂う炎の中で 火を消し止めようと大活躍です。 そのすさまじ…
尊は兵をはげましながら、 ご自分も剣を抜いて草をはらい、 枝を切って猛火と戦いました。
そのうちに黒い煙がどっと吹き寄せました。 山火事です。 黒い煙は、あっという間に火の波に変わりました。
一隊は、頂上へ向かって登り始めました。 が、しばらくすると辺りの様子がおかしいことに 気がつきました。
今からおよそ1900年ほど前、 第12代景行天皇の御代のこと、 日本武尊とその軍勢が東国地方平定の折、 宝登山にのぼって神霊を拝したというお話しです。